痛みに限らず感覚は記憶されます。
本来局所的には痛みが発生しない場合でも痛み等なんらかの感覚を感じることがある。
日頃から痛みを放って置くと、さらにひどい慢性痛になってしまう可能性があるということです。

そうなる前に当院へ。

幻肢痛

怪我や病気によって四肢を切断した患者の多くが体験する、難治性の疼痛。あるはずもない手や足が痛む症状。例えば足を切断したにもかかわらず、つま先に痛みを感じるといった状態を指す。あるはずのない手の先端があるように感じる、すなわち幻肢の派生症状である。脳可塑性が高いことに起因するものと考えられている。(痛み等が神経系で記憶される)

中枢性痛覚過敏(Central senstization)

C線維の末梢からの頻回な刺激(ここでは、痛みなど不快刺激のこととお考えください)が持続すると、脊髄ニューロンにも変化が起ってくる。これはwind upという現象で、ニューロンは末梢からの刺激に対し一対一で対応していたものが、一回の刺激によりたくさんの発火を起こすようになり、ついには刺激を止めても発火活動がしばらく続くようになる。これは中枢性痛覚過敏と呼んでいる。

繰り返し入力があると、細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し、マグネシウムイオンが外れてチャンネルが開通状態となり、少しのNMDA受容体刺激でも大量のカルシウムイオンが細胞内に流れ込むようになる(活性状態のNMDA受容体)。すなわち、信号の増幅が起こり、暫くの間持続する (長期増強やワインドアップ)。 この状態には、入力と出力の間にはもはや比例関係ない。長期増強は中枢神経系内の至る所に存在し、最初は海馬で発見され、記憶に重要な役割を果たしていると考えられている。 ワインドアップは脊髄で観察され、NK-1受容体やノシセプチン受容体などの刺激の助けが必要である点が長期増強と異なる。

末梢性痛覚過敏(Peripheral sensitization)

神経末梢は痛みを受容するばかりでなく、軸索反射によりそこからサブスタンスPなどの化学物質を分泌する。これは肥満細胞に作用してヒスタミンを遊離したり、その他の発痛物質を産生し、また血管拡張を起したりする。また組織が損傷されると、プロスタグランジンをはじめ、カリウムやブラジキニンなどいろいろの発痛物質が出てくるので、神経末端は発痛物質のジュースの中に浸されているような状態になる。このような状態では神経の痛みに対する感受性は著しく高まるので、これを末梢性痛覚過敏と呼んでいる。

痛みの可塑性

最近の10年間では、病態時の「痛み」の解明が進み、「痛み」による神経回路の可塑的変容が明らかにされつつあり、長期間持続的に発せられた「痛み」信号は、「痛み」の原因であった病巣が治癒した後も一種の記憶として神経回路に残ってしまい、信号を発し続ける可能性があることがわかってきています。このことから、「痛み」を放置しておくことが更なる複雑な「痛み」(慢性痛)を作ってしまうと考えられるようになりました。http://www.aichi-med-u.ac.jp/pain/

耳鳴りの原因は脳だった 関連部位明らかに

産経新聞 2013・8月3日(土)より抜粋

300人に1人が悩まされているという根本的な原因は不明で治療法が確立されていないため、複数の病院を渡り歩く患者も少なくない「耳鳴り」について、和歌山医大研究グループは、原因となる脳の関連部位が明らかになったと発表。

同医大は平成23年5月、耳鼻咽喉科や神経精神科、生理学、解剖学などの医師による共同研究グループを立ち上げ、重度の耳鳴りに悩む患者24人に対してMRI検査を実施。重症患者ほど脳の特定部位のネットワークに異常があり、耳鳴りの音は聴覚とは関係なく脳で作り出されていることを突き止めた。

また耳鳴りの強さは、脳の中心部に位置する「尾状核」や記憶などに関わる「海馬」といった部位が関連し、
耳鳴りの不快感は前頭葉の一部が関わっていることなども判明。耳鳴りと不快感を分けて治療することで、耳鳴りは治せなくても不快感を取り除ける可能性があるという。